8日目 土曜日、映画とソファとわたしだけ。

朝7時半、自然と目が覚めた。
昨日は夜ふかしもせず、ゆっくりお風呂に入って、気持ちよく眠れたせいだと思う。
でも「今日は休みだ」と思った瞬間、再び布団の魔力が襲ってくる。

しばらくゴロゴロ、スマホを見ながら寝返りを打つ。
通知はそこそこあるけど、急ぎのものはなし。
誰かからの誘いもない、特別な予定もない。
そう、「何もない土曜日」――実は一番うれしい日。

結局、ちゃんと起き上がったのは9時過ぎ。
ゆっくり顔を洗って、朝ごはん代わりに昨日の残りのパンと、インスタントのスープ。
平日は立ち食いに近い朝食ばかりだから、こうして食卓につく余裕だけで気分が全然違う。

コーヒーを淹れて、テレビをぼーっと眺める。
特に見たい番組があるわけじゃないけど、朝の生活音があるのって、なぜか落ち着く。
「今日はなにしようかな…」と考えるけど、実はもう決めていた。

今日は“映画の日”。

平日は時間に追われて、観たい映画を「後で観よう」と思っては溜めてきた。
その“あとで”が、ようやく今日だ。
TSUTAYANetflixも、サブスクのライブラリも、わたしの映画待ちリストはずらりと並んでいる。

部屋を軽く片づけて、毛布とクッションをソファにセット。
照明も少し暗めにして、ちょっとしたミニシアター気分。
飲み物は炭酸水、スナックはポップコーンを電子レンジで温めて準備完了。

1本目は前から観たかった邦画のヒューマンドラマ。
冒頭から引き込まれて、気づけば涙がぽろぽろ。
「泣きたいわけじゃなかったのに…」と苦笑いしながらも、心がスッと軽くなるような気がした。

2本目は洋画のサスペンス。
スマホを置いて、画面に集中。
登場人物の表情、セリフの間、音楽、細部まで神経が研ぎ澄まされる感覚。
映画の中で誰かの人生を追体験できるこの時間が、わたしは本当に好きだ。

お昼はUber Eatsでサンドイッチとフライドポテト。
出かける元気はないけど、ちょっとだけ特別な気分になりたくて。
スマホでメニューを選んでる時間すら楽しいのが、休日マジックかもしれない。

午後は少しだけ昼寝。
映画を2本観て、満足感と眠気が交差したころ、ソファに毛布をかけて目を閉じた。
窓から入るやわらかい光と、外から聞こえる子どもの声や自転車の音。
完全な静寂じゃないところが、むしろ心地いい。

目が覚めたのは15時すぎ。
「休日ってほんとに一瞬で終わるな」と、ちょっとだけ焦るけど、まだ映画は観られる。
温かいお茶を淹れて、3本目スタート。
今度はアニメーション映画。絵の美しさ、セリフの少なさ、そして間。
画面をぼーっと見ているだけで、心が癒やされるような時間。

ふとスマホを見ると、学生時代の友人からLINEが届いていた。
「今日なにしてる?」という、ゆるい一言。
“映画観てゴロゴロしてる”と返信したら、“最高じゃん、羨ましい”と即レスが来た。

「なにもしていない」休日を、誰かに肯定してもらえるって、地味に嬉しい。

夕方は、映画を一旦ストップして、少しだけストレッチ。
YouTubeの15分動画を観ながら、体を伸ばす。
運動が得意なわけじゃないけど、固まった体をほぐすと、不思議と頭の中もクリアになる。

そのままシャワーを浴びて、夜ご飯の準備。
今日はパスタ。トマトソースにツナと玉ねぎを入れて簡単に。
お皿に盛るだけでちょっとだけ気分が上がる。
サイドに作り置きのピクルスを添えて、食卓が少しだけ華やかに見えるのがうれしい。

夜は、静かなサスペンス映画で締めくくり。
ライトは間接照明だけにして、静かに物語の中に入り込む。
普段なら途中でスマホを見てしまうけど、今日は最後まで一度も手を伸ばさなかった。
終わったあと、静かな余韻だけが部屋に残る。

時計を見ると、もう22時すぎ。
洗濯機を回して、軽く部屋を整えたら、今日の“映画の日”は終了。

最後に今日観た映画をノートアプリにメモする。
「心がほぐれた」「また観たい」「あのセリフが好きだった」――
ひとり言のような感想を打ち込んで、自分だけの映画記録が少しずつ溜まっていく。

1日中、家から出なかったけれど、心はたくさんの場所を旅した気がする。
それが、映画のいいところ。
外に出なくても、誰かの人生に触れて、笑ったり泣いたりできる。
そしてそれが、わたしにとっての「回復」なんだと思う。

明日は日曜日。もう少しだけ外に出てもいいかもしれない。
でも今日は、家で過ごすことに大満足。
「ひとり」で「静かに」過ごす休日は、思ってるよりずっと贅沢だ。

おやすみ、映画とソファと、今日のわたし。