朝、アラームが鳴っているのに、なかなか体が動かない。
目は開いているのに、布団の中から出たくない。
そうだ、水曜日だ。週の真ん中、まだ終わっていないけど、疲れだけはしっかり溜まってきている。
スマホを手に取り、SNSを軽くスクロール。眠たい頭に、何の情報も入ってこない。
でも、画面を見ることで「今日が始まった」と実感する習慣になっている気もする。
7時15分、ようやく起き上がる。ギリギリまで寝ていたかったけれど、朝食を抜くと午前中がもたない。トーストとヨーグルト、インスタントの味噌汁だけの簡単な朝ごはん。それでも口に入れると少しずつ目が覚めてくる。
テレビをつける気にもなれず、キッチンで無言のまま朝を進める。
水曜日の朝は、なぜかいつも静かだ。自分の中の“やる気メーター”がギリギリで、無理に音を取り入れたくない感じ。
シャワーを浴びて、ドライヤーで髪を乾かしながら、今日のスケジュールをぼんやり頭の中で整理する。午前中に1件会議、午後にクライアントとの打ち合わせ。あとは細々したタスクの消化。忙しいわけじゃないけど、気力は確実に落ちている。これが水曜日だ。
会社へ向かう電車の中、人の表情もどこか疲れている。月曜の緊張感も、金曜の緩みもなく、ただひたすら「こなしていくぞ」という気配。自分もその一人。イヤホンから流れる音楽に、少しでも元気をもらおうとするけど、今日はあまり響かない。
9時、会社に到着。デスクの上には、昨日の自分が置いていったToDoメモ。
「これを片付けて、次へ進もう」そんな意志が見えるけれど、今日の自分は少し違う。
「もう少しゆっくり進めさせてくれ」と思いながら、PCを立ち上げる。
10時からチームミーティング。進捗報告と来月の企画案について軽く話し合う。自分の番が来るまで、同僚の話を聞いているふりをしながら、脳内では午後の資料修正のシミュレーションをしていた。
社会人になってから、「話を聞いているようで実は他のことを考えている」スキルばかりが上がっている気がする。
昼休み、気分転換を兼ねて外へ。
今日は近くのラーメン屋で味噌ラーメンを食べた。思っていたより濃い味で、疲れていた体にはちょうどよかった。味よりも、あの湯気とスープの温度に癒される。背中を丸めて一人で黙々と食べる時間が、妙に落ち着く。
午後、クライアントとの打ち合わせ。オンライン会議。
最近増えてきた若い担当者、言葉選びが少し不安定。でも、その分やる気は感じる。こっちもまだ20代、偉そうなことは言えないが「伝える努力を続ける」ということだけは、やめたくないと思っている。
打ち合わせのあとは、軽く頭がぼーっとした。資料の修正を進めながら、コーヒーを淹れてひと息。午後3時、会社の窓の外を眺めると、青空が広がっていた。夏が近い。まだ完全な暑さじゃないけれど、空気の輪郭が変わってきているのを感じる。
こういうとき、ふと「旅に出たいな」と思う。海の近く、温泉、誰も知らない町。
だけど実際は、あと2日会社に来て、週末に洗濯をして、いつも通りのスーパーで買い物をして終わるのが現実。それでも、旅を妄想するだけで、少し気持ちが軽くなるのだから不思議だ。
定時過ぎ、今日は少し早めに退勤。水曜日は「帰ってもいい日」と勝手に決めている。
仕事を残して帰ることに罪悪感を感じていた頃もあったけれど、最近は「持ち帰らない」のがポリシーになってきた。時間よりも、心の余裕がほしい。
スーパーに寄って、冷凍餃子と野菜ジュース、あとヨーグルトを買う。料理する気力はないけど、栄養バランスは一応意識したい。
家に着いたら、まず靴を脱いでソファにダイブ。10分だけのつもりが、30分くらいそのまま動けなかった。
晩ごはんは、冷凍餃子と白ごはん、キャベツの千切り。
YouTubeで海外VLOGを流しながら食べる。英語はなんとなくしか分からないけれど、画面の中の穏やかな暮らしに癒される。遠くの誰かの「静かな日常」を見ることで、自分の生活にも温度が戻ってくる。
食後は、洗濯物を取り込んで畳んで、部屋を軽く片付ける。
週の真ん中、水曜日に部屋が整っていると、なぜか「ちゃんと生きてる」と思えるから不思議。特別なことはしてないのに、整えることで安心できる。
夜10時、ようやくベッドに入って、照明を落とす。スマホを少し眺めて、返信していなかったLINEに返事をする。友達からの「最近どう？」というメッセージ。
「まあまあかな。ちょっと疲れてるけど、元気だよ。」
そんな返事をして、自分に言い聞かせるように送信ボタンを押した。
水曜日、疲れてても、ちゃんと今日をやりくりした。
それだけで、よくやったと思う。誰かに評価されなくても、自分だけは知っておきたい。
今日という日も、ひとつ前に進んだこと。
明日は木曜日。また別の風が吹く。
おやすみ、水曜日。
今日を乗り越えたみんなに、ちょっとだけいい夢が見られますように
